内部告発で起こり得るリスクとは?
内部告発は、企業内の不正行為を正し、職場環境を良くすること、そして自社のダメージを最小限に抑えることを目的とした、正当な行為です。
それにもかかわらず、内部告発後に不当な扱いを受けるケースは決して少なくありません。
実際に起こりうる主なリスクには、以下のようなものがあります。
不当な人事
担当していた業務や企画から外される、賃金が安い部署へ異動させられる、降格処分を受ける、解雇されるなど、不利益な配置転換や懲戒処分を受ける可能性があります。
同僚からの嫌がらせやいじめ
職場で無視される、仕事を取り上げられる、陰口を言われる、私物を盗まれる・壊されるなど、人間関係が悪化する可能性があります。
法律で保護されていてもリスクはゼロではない
公益通報者保護法により、企業は内部告発者に対する不利益な取り扱いが禁じられています。
しかし、企業側が「内部告発が原因ではない」と主張し、不当性を隠すケースも存在します。
たとえ法律で保護されていても、報復や嫌がらせを完全に防ぐことは難しいのが現実であることを認識しておく必要があります。
- 担当していた業務・企画から外された
- 転勤・出向を命じられた
- 賃金が安い部署へ異動させられた
- 降格処分を受けた
- 退職を強要された
- 配置転換先が決定するまで自宅待機になった
- 情報漏洩・守秘義務違反として解雇された
- 同僚やチームメンバーとの人間関係が悪化した
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【リスクヘッジ】匿名で内部告発をする手順と注意点
内部告発をするうえで、最も重要なリスクヘッジの一つが「匿名性の確保」です。
告発者自身が特定されないように、慎重に手順を踏むことが求められます。
内部告発は匿名でもできる
内部告発は、必ずしも実名で行う必要はありません。
公益通報者保護法には、匿名での通報も公益通報として認められることが明記されており、企業側にも匿名通報を受け付けるよう求められています。
本法は対象となる通報を顕名(実名)の通報に限定しておらず、匿名であっても、本法に定める要件を満たせば公益通報に該当することから、内部公益通報受付窓口では、匿名の公益通報を受け付ける必要があります。
引用元:消費者庁「事業者における通報対応に関するQ&A「内部公益通報受付窓口では、匿名の公益通報を受け付ける必要がありますか。」
ただし、匿名で通報する場合でも、以下の要件を満たすことが原則です。
- 通報者が通報の対象となる事業者へ労務提供している労働者であることのほか、必要と認められるその他の者
- 通報に不正の目的がないこと
- 法令違反行為が生じ、又はまさに生じようとしていること
- 通報内容が真実であると証明できること
- 厚生労働省が法令違反事実について処分又は勧告等の権限を有していること
出典:厚生労働省「公益通報者の保護」
匿名性の保護は重要ですが、ごく一部の人しか知り得ない情報や、告発者につながる可能性が高い情報には注意が必要です。
【要確認】自社企業に「内部通報制度」は導入されているか調べる
国は、内部告発者を守るために「内部通報制度」の整備を企業に義務付けています。
内部通報制度とは、企業が企業内の不正を早期に発見して企業と従業員を守るため、組織内の不正行為に関する通報・相談を受け付け、調査・是正する制度です。
公益通報者保護法により、従業員数(アルバイトや契約社員、派遣労働者等も含む。)が300人を超える企業には、内部通報制度の導入が義務付けられています。
また、従業員数が300人以下の企業にも、内部通報制度の整備に努めることが求められています。
企業は通報者や相談者に不利益な取扱いをすることが禁じられており、通報窓口などの担当者には通報者を特定させる情報の守秘義務が課せられています。
出典:政府広報オンライン「組織の不正をストップ!従業員と企業を守る「内部通報制度」を活用しよう」
この制度が導入されていれば、通報窓口の担当者には通報者を特定させる情報の守秘義務が課され、不利益な扱いを受けることが禁じられています。
まずは、お勤め先の企業に内部通報制度が導入されているか、通報先はどこなのかを必ず確認しましょう。
企業によっては社外に通報窓口を設ける「外部通報制度」を導入しているところもあります。
通報窓口は弁護士事務所に設定している企業が多いようです。
不正を証明する証拠を準備する
内部告発をする前には、不正が行われていることが分かる証明する証拠が必要です。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 改ざんされているデータや帳簿
- 不正行為が確認できる写真・動画・録音データ
- 不正行為を指示されたメールやチャットの記録
証拠は複数あるほうが有利ですが、リスクを避けるためにも「告発者が特定できないような証拠」を集めるのがベストです。
限られた人しか知らない情報の場合、特定される恐れがあるので注意しましょう。
これらの証拠を自分で集める場合は、ICレコーダーや小型カメラを活用する方法が考えられます。
しかし、証拠集めに失敗したり、相手に気づかれてしまったりすると、証拠を隠蔽されたり、あなたの立場がさらに悪化するリスクも伴います。
より安全で確実な証拠収集を望む場合は、探偵事務所に依頼するという選択肢があります。
探偵は、尾行や張り込み、聞き込み、潜入調査といった専門的な技術と知識を活かし、あなたの身元を明かすことなく、法的に有効な証拠を収集することが可能です。
内部告発に「証拠」が必須な理由
内部告発を成功させるためには、不正の事実を客観的に証明する証拠が不可欠です。
もし証拠がない状態で通報した場合、企業や不正を行った人物から「言いがかり」「虚偽の報告」とされ、逆に告発者自身が処分を受けるリスクさえあります。
不正を証明する証拠は、多ければ多いほど有利になります。
また、告発者と結びつかないような、客観性の高い証拠を集めることが重要です。
通報先を決める
証拠が揃ったら、通報先を決定します。
主な通報先とその特徴を理解し、慎重に選びましょう。
社内の相談窓口は、不正をもみ消そうとする動きがある場合、避けたほうが無難かもしれません。
迷う場合は、匿名性が高く、法的な対応も見込める社外の相談窓口か行政機関への通報をおすすめします。
また、どこに相談したらいいか分からないときは、消費者庁「公益通報の通報先・相談先 行政機関検索」で検索してみましょう。
内部告発ができる人は、公務員含む正社員、アルバイトやパートタイマー、契約社員や派遣社員、役員や1年以内の退職者のみになります。
家族・知人・友達が代理で行うことはできないためご注意ください。
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内部告発のあとに嫌がらせ・報復人事を受けたら?
「通報したら、数ヶ月後に異動を命じられた」「職場で無視されるようになった」「守秘義務違反として解雇された」といった事態に直面した場合、迅速かつ適切な対処が必要です。
嫌がらせの具体的な対処と準備をする
嫌がらせや報復行為が始まったら、まずは落ち着いて事実を記録し、証拠を集めましょう。
証拠集めを行う際は、以下の点を意識しながら進めましょう。
- いつ、どこで、誰に、どんな嫌がらせを受けたかを詳細に記録する
- 嫌がらせの写真、動画、録音、メール、SNSのやり取りなど、客観的な証拠を集める
証拠がなければ、被害を訴えても「気のせい」「勘違い」とされてしまう恐れがあります。
法的措置を取ることを検討する
嫌がらせや報復行為は、民法上の不法行為に該当する場合があります。
証拠を揃えることで、企業を相手に慰謝料や損害賠償請求を行うことが可能になるので、法的措置を検討している方は、必ず覚えておきましょう。
ただし、そのためには「嫌がらせが内部告発を理由としていること」を証明する必要があります。
後述する専門家の助けを借りることで、法的措置を成功させる可能性を高めることができます。
専門家に相談する
嫌がらせや報復行為に直面した際、一人で悩まずに専門家に相談することが重要です。
ここからは、代表的な相談窓口についてご紹介します。
弁護士事務所に相談すべきケース
- 内部告発後に解雇や降格、給料の減額など、すでに具体的な不利益な処分を受けている場合
- 嫌がらせの証拠がすでに手元にある、または第三者の証言を得られている場合
- 損害賠償請求や慰謝料請求など、法的な解決を強く望んでいる場合
上記のケースの場合は、証拠を準備したうえで弁護士事務所に相談しましょう。
弁護士は法律の専門家として、あなたの権利を守るための法的手段を講じてくれます。
費用は依頼内容によって異なりますが、おおよそ30万~100万円程度になります。
探偵事務所に相談すべきケース
- 嫌がらせを受けているが、確たる証拠が手元にない場合
- 誰が嫌がらせをしているのか、犯人が特定できない場合
- 組織的な嫌がらせやガスライティングなど、巧妙な手口で被害に遭っている場合
上記のようなケースの場合は、探偵事務所に嫌がらせ調査の相談・依頼を行うことをおすすめします。
探偵は「嫌がらせ調査」を始めとする調査の専門家です。
尾行や張り込み、潜入調査といった手法で、嫌がらせ行為の決定的瞬間を記録し、裁判でも有効な「調査報告書」を作成してくれます。
嫌がらせ調査の費用は調査内容によって異なりますが、1件10万円程度が目安です。
詳しい費用は、各探偵事務所の無料見積り相談でお尋ねしてみましょう。
当社「T.L探偵事務所」でも、嫌がらせ調査を実施しております。
もし、内部告発をしたことが知られ、嫌がらせを受けているといった状況の場合には、一度当社までご相談ください。
病院を受診して診断書をもらう
嫌がらせや報復行為による精神的なダメージは、想像以上に大きいものです。
無理をせず、心療内科や精神科を受診し、医師の診断書を出してもらいましょう。
診断書は、法的措置を取る際の重要な証拠になります。
また、4日以上出勤できない状態が続く場合は、傷病手当金の対象にもなります。
自分自身を守るためにも、心と体の状態を優先してください。
内部告発の成功事例から学ぶ、リスクを抑えるポイント
ここでは、実際に内部告発を行った方々の事例を通して、リスクを抑えるための重要なポイントを解説します。
成功事例|探偵を活用して証拠を掴んだケース
IT企業に勤めるAさんは、上司の経費不正に気づきました。
しかし、自分一人では証拠を集めるのが難しく、報復を恐れていました。
そこで、匿名性を保つために探偵事務所に相談しました。
探偵は、上司の不正な行動を尾行で確認し、不正な金の流れを示す証拠写真や、横領を認める会話の録音データを収集しました。
この客観的な証拠を基に、Aさんは匿名で通報し、その結果、上司は処分され、Aさんは報復を受けることなく、不正を正すことに成功しました。
【この事例から学ぶポイント】
- 専門家の活用
探偵に依頼することで、自分では困難な証拠収集を安全に行うことができます。
- 匿名性の確保
探偵が動くことで、告発者の身元が特定されるリスクを抑えられます。
- 客観的証拠の重要性
動かしがたい証拠が、内部告発を成功に導く鍵となります。
失敗事例|証拠不十分で立場を悪化させたケース
中小企業に勤めるBさんは、同僚の顧客情報不正持ち出しに気づき、証拠がないまま社内の窓口に通報しました。
しかし、不正は確認されず、逆に「虚偽の通報をした」と疑われ、社内で噂が広まってしまいました。
その結果、Bさんは上司から冷遇され、精神的に追い詰められ退職に追い込まれました。
【この事例から学ぶポイント】
- 証拠の必要性
証拠がないと、通報が「虚偽」と見なされ、かえって自分が不利になる可能性があります。
- 通報先の見極め
安易に社内窓口に通報すると、身元が特定されるリスクが高まります。
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