いじめを訴える方法と慰謝料の相場|学校、職場、近所などケース別に解説

いじめを訴える方法と慰謝料の相場|学校、職場、近所などケース別に解説

2025.09.22 / # 嫌がらせ調査

「いじめを受けている」 「上司からパワハラを受けている」 「子どもが学校でいじめられているかもしれない」など、いじめ・嫌がらせのご相談を日々、多くいただきます。 厚生労働省が公表した「令和6年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、令和6年の民事上の個別労働紛争は267,755件に及びます。 相談内容の内訳は「いじめ・嫌がらせ」が54,987件で13年連続最多となりました。(※1) また、職場でのいじめだけでなく、学校でのいじめも非常に多く、文部科学省の「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生活指導上の諸課題に関する調査」によると、小・中・高校・特別支援学校におけるいじめの認知件数は、732,568件という結果が出ています。(※2) このように、大人や子どもに関わらず、非常に多くの方がいじめ問題に対して悩みを抱えています。 いじめ問題を解決するために、「相手を訴えることはできるのだろうか?」「慰謝料はもらえるのだろうか?」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。 しかし、何から始めればいいかわからず、不安でいっぱいかもしれません。 本記事では、いじめで相手を訴える方法や、訴訟に不可欠な証拠の集め方、慰謝料の相場まで、わかりやすく解説します。 また、学校、職場、近所など、いじめの種類別に適した対処法もお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。

※1出典:「令和6年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します-厚生労働省
※2出典:「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」-文部科学省

いじめで相手を訴える前に知っておくべきこと

いじめで泣くビジネスウーマン
いじめは、誰にとっても無関係とは言えない身近な問題です。

しかし、実際にいじめの被害に遭った時、何から始めればいいかわからず、一人で悩みを抱え込んでしまう方が多くいらっしゃいます。

相手を訴えるためには、正しい知識と手順を知ることが非常に重要です。

ここでは、いじめで相手を訴える前に、まず押さえておくべき基本的な情報について解説します。

法的に「いじめ」と認められる行為とは?

いじめは、その行為の内容によって民事と刑事の両面で責任を問うことが可能です。

民事訴訟とは、いじめによって受けた精神的な苦痛や治療費といった損害を、金銭で解決するための手続きです。

いじめが「不法行為(民法第709条)」にあたると判断された場合、加害者に対して損害賠償を請求することができます。

【参考】民法第709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

出典:「民法」-e-Gov法令検索

一方、刑事告訴とは、いじめが暴行罪や侮辱罪、脅迫罪などの犯罪行為に該当する場合に、加害者に刑事罰を科すことを求める手続きです。

いじめの内容によっては、懲役刑や罰金刑が科される可能性もあります。

いきなり訴訟はNG!訴訟以外の解決策も検討しよう

いじめ問題を解決する手段は、訴訟だけではありません。

まずは、裁判所外で話し合いの場を設けて和解する示談を検討するのが一般的です。

はじめに加害者と示談を行い、交渉がうまくいかなかったら訴訟に踏み切るケースが多いです。

いじめを訴えるための「証拠」の集め方

人差し指を立てる男探偵
前述した訴訟や示談を行うには、いじめに遭ったという証拠が必要になってきます。

裁判官は、証拠に基づき事実を認定するため、証拠がないと訴訟が難しいケースもあります。

ここからは、具体的な証拠の集め方について詳しく解説します。

物的証拠

  • 診断書・医師の意見書

いじめが原因でうつ病や適応障害などの精神疾患、または身体的な被害を負った場合は、必ず病院を受診し、診断書や医師の意見書をもらいましょう。
これらは、いじめと心身の不調に因果関係があることを示す重要な証拠となります。

  • 写真・動画・音声データ

いじめによるケガや、物を壊された・汚されたといった被害は、写真や動画で記録してください。

暴言や嫌がらせ行為を受けている場合は、ICレコーダーやスマートフォンの録音機能を使って記録しておくことが有効です。

  • SNS・メッセージのやり取り

LINEやメール、SNS上での誹謗中傷や脅迫は、やり取りの記録そのものが証拠になります。

スクリーンショットを撮る、メッセージ履歴を保存するなどして、消される前に必ず保全しておきましょう。

記録による証拠

  • いじめの被害を記録したノートや日記

いじめがあった日時、場所、加害者、被害内容、目撃者などを詳細に記録しておきましょう。

可能な限り毎日、時系列で記録することが重要です。

この記録は、裁判になった際に「いつ」「どこで」「誰に」「何をされた」かを具体的に示すための重要な資料となります。

お子様の言い分や第三者の目撃証言も重要な情報ですが、これらは法的に弱い補助的な証拠とみなされることが多いため、上記で紹介した客観的な証拠を一つでも多く集めることが成功の鍵となります。

また、当社「T.L探偵事務所」では、ご自身で証拠を集めるのが難しい場合に、プロの調査員が代わりに調査を行い、裁判や調停の場でも有効な「調査報告書」としてお渡ししております。

【参考】相手側に内容証明郵便を送ることも有効

いじめの被害にあった事実や証拠を記載し、相手側に内容証明郵便を送ることも有効な手段です。

内容証明とは、郵便物の内容、送付日や当事者などを郵便局に証明してもらえる郵便物のことです。

内容証明が残ることによって、加害者側に「いじめの事実が確認できなかった」という言い逃れをしにくくすることが期待できます。

また、内容証明郵便は、いじめの被害にあった事実や証拠などを書き、弁護士から送付してもらうことをおすすめします。

弁護士は、訴訟を見据えて文章を作成しますし、弁護士の存在をアピールすることで、相手に心理的プレッシャーを与えたり、本気度を示すことができます。

いじめの種類別にみる訴え方のポイント

手でバツ印をつくる女性

職場いじめの対処法

職場でのいじめは、その態様によってさまざまなパターンがあります。

ここでは、代表的な行為と、それぞれが法的にどのように扱われるかについて解説します。
・直接的な暴力や暴言
いじめの内容によっては、暴行罪や侮辱罪、脅迫罪といった刑事罰が適用され、懲役刑や罰金刑が科される可能性があります。

  • 暴行罪が成立し得るケース:「上司に顔を殴られた」「先輩にお腹を蹴られた」など、直接暴力をふるわれた場合
  • 侮辱罪が成立し得るケース:「会議中に『アホ、バカ』と言われた」「職場で『お前は本当に仕事ができねーな』と罵られた」など、暴言を浴びせられた場合
  • 脅迫罪が成立し得るケース:「仕事でミスをした際に『給料を減らすからな』と言われた」「先輩から『ぶっ飛ばすぞ』と怒鳴られた」などの言葉で脅された場合

・無視や仲間はずれ、無理難題の要求
これらは、直接危害を加える行為ではないものの、精神的苦痛を強く与える行為です。
肉体的・精神的に追い込まれ、心身に不調をきたした場合は、損害賠償請求が可能になります。

・ミスを必要以上に問い詰める
指導の範囲を超え、常識的に逸脱した注意や指導は、弁護士や探偵、労働基準監督署などの専門家にまず相談することを検討しましょう。

・責任を押し付けられる・手柄を奪われる
チームのミスを押し付けられたり、自分の手柄を奪われたりする行為も、精神的な苦痛を味わうことがあるでしょう。

・会社を休ませてもらえない
体調不良などに無理な出勤を強要することは、会社の安全配慮義務違反となる可能性があります。

このように、職場いじめのパターンは多岐にわたり、その程度によっては民事責任や刑事責任を追及できる場合もあります。

学校いじめの対処法

学校におけるいじめは、被害者が未成年であることから、その対処には特に慎重な対応が求められます。

ここでは、いじめの被害に遭った場合に保護者としてどのように行動すべきか、また、学校の義務と法的に訴える際のポイントを解説します。

・学校でいじめを受けた際の訴える相手

加害者や通っている学校、状況によっては教育委員会へ訴える必要があります。

・訴え方のポイント

学校におけるいじめの対処は、「いじめ防止対策推進法」に基づき、学校や教育委員会に防止や早期解決の義務があります。

まずは担任の先生やスクールカウンセラーに相談し、いじめの具体的な内容や日時を記録したメモ、録音データなどの証拠を提示して、いじめの事実を調査してもらいましょう。

学校の対応が不十分な場合は、教育委員会への相談も検討してください。

それでも解決しない場合や、被害が重大な場合は、弁護士への相談を検討し、法的な手続きを進めることが重要です。

その他のいじめの対処法

職場や学校以外でも、いじめは起こり得ます。

ここでは、近所やインターネット上で起こるいじめについて、法的な観点から解説します。

・近所・ママ友いじめ

近隣トラブルやママ友間のいじめは、直接的な暴力から無視、悪口の拡散など多岐にわたります。

その行為は、名誉毀損やプライバシー侵害、また暴行罪などに該当する可能性があります。

これらの対処法として、まずは、いじめの記録(日時、場所、内容など)や証拠を可能な限り集めましょう。

自治会の相談窓口や警察に相談することも有効です。

また、法的措置を検討する際は、弁護士に相談し、慰謝料請求や告訴を行うことができます。

・ネットいじめ

SNSやオンラインゲーム上での誹謗中傷やなりすましなどのネットいじめは、匿名性が高いため加害者の特定が難しいと思われがちです。

しかし、発信者情報開示請求を行うことで、プロバイダから加害者の情報(氏名、住所など)を開示してもらい、特定できる可能性があります。

もしネットでのいじめにあった際は、投稿やメッセージをスクリーンショットを撮って必ず保存してください。

そして、サイトの運営会社やプロバイダに、投稿の削除や発信者情報の開示を求めましょう。

いじめで慰謝料請求が認められた判例

裁判所
ここからは、いじめを理由に慰謝料が認められた判例をいくつかご紹介します。

1. 安全配慮義務違反で80万円の慰謝料

2022年3月29日、千葉地方裁判所民事第3部判決の事件では、客に指を捻挫させられた従業員Aさんに対し、上司がパワハラ的な対応や言動をしたことが問題となりました。
Aさんは、勤務先の会社を安全配慮義務違反で訴えました。

客の暴行でケガをしたAさんは、上司から「それくらい我慢しなくちゃ。君は心が弱いよ」と言われ、体調が悪化し、ストレス性障害と診断されてしまいました。
これまでにも上司はAさんにパワハラと感じられる対応をとっていました。

勤務先の企業は職場環境を調整する義務に違反したとされ、「Aさんは著しい精神的苦痛を受けたと認める」「苦痛に対する慰謝料は80万円」と判決が下されました。

2. マタニティハラスメントで100万円の慰謝料

2018年1月26日、岐阜地方裁判所判決の事件は、マタニティハラスメントです。

歯科クリニックに勤める歯科技工士の女性Bさんは、産休・育休の取得により嫌がらせ行為を受け、精神疾患の診断を受けました。

病気を理由に休職したところ、休職事由が休職期間の満了日までに解消されなかったことを理由に、Bさんを一般退職扱いにしました。

他にも、有給休暇を取得させない、取得しようとしたBさんに暴言を吐くなどのパワハラ行為がありました。

Bさんは「有給休暇を取得すれば、自主退職の形式で退職しなければならない」という説明も受けています。

Bさんは退職し、慰謝料100万円と弁護士費用10万円の請求が認められました。

3. 「精神的苦痛に対する慰謝料は100万円を下らない」とされた判決

2017年12月5日、名古屋地方裁判所判決の事件では、裁判長から「原告の精神的苦痛を慰謝するための慰謝料の金額は100万円を下らない」という判決が下されました。

東証プライム企業の大手不動産会社に営業社員として勤務するCさんは、達成不可能なノルマを課せられ、暴言を吐かれた結果、精神疾患にかかり退職することになりました。

裁判所はパワハラを認めています。

会社に対し、使用者責任又は安全配慮義務違反の債務不履行責任に基づく損害賠償として、慰謝料100万円の他に治療費や休業損害・弁護士費用を加えて、合計167万5273円の支払いが命じられました。

4. 「歯間ブラシの掃除をさせられた」パワハラとセクハラで60万円の慰謝料

江戸川区が設置・管理する学校で起きたセクハラ・パワハラ事件です。

非常勤事務の女性職員Dさんは、同僚Eから胸の大きさを話題にされる、胸を触られるなどのセクシャルハラスメントを受けていました。

また、歯間ブラシを洗わされたりするなどのパワーハラスメントもあり、江戸川区に対して国家賠償法又は職場環境配慮義務の債務不履行、東京都に対しては国家賠償法に基づき連帯で損害賠償を求めました。

セクハラ・パワハラ行為を女性の同僚に相談したところ、同僚Eから「話したのか」と詰問されました。

Dさんはクリニックで適応障害の診断を受け、校長には口外しないよう求められました。

その後も同僚Eと2人で同じ教室で働く環境が続き、適正な措置は取られませんでした。

Dさんには、慰謝料60万円と通院費用・弁護士費用が認められました。

セクハラだけではなく、歯間ブラシの掃除に関しても「通常人が嫌悪感を催すと思われる行為を意図せずとはいえさせられた」「社会通念上許容できる限度を超える被害を受けている」と述べられました。

上記4つの事件で共通しているものとして、被害者が精神疾患にかかるという被害の大きさ、医師の診断書など証拠があるという点が挙げられます。

また、訴えた相手が加害者ではなく職場である点も重要なポイントです。

いじめの慰謝料の相場はいくら?

天秤とお金
いじめやパワハラの慰謝料の相場は50万~300万円程度です。

慰謝料は、いじめやパワハラの内容、証拠の有無、いじめによる損害などによって金額が異なります。

被害者が自殺に追い込まれてしまった場合の慰謝料は、他のケースと異なり、高額になることがほとんどです。

その場合、慰謝料額は2,000万~2,800万円ほどになります。

また、慰謝料のほかに、逸失利益も損害賠償の対象に含まれます。

逸失利益とは、パワハラ等の不法行為による自殺がなければ、被害者が得られたであろう将来の利益(収入など)を指します。

この逸失利益は、被害者の収入によりますが、おおよそ4,000万円~5,000万円程度という金額になることが多く、慰謝料と合わせた合計の賠償額は高額になります。

まとめ

今回は、いじめで相手を訴える方法や、慰謝料請求が認められた判例と慰謝料の相場を解説しました。

いじめのご相談は多く寄せられており、特に職場や学校は日常生活の大半を過ごす場所であるため、その環境が悪いと私生活の幸福度に大きく関わります。

少しでも嫌がらせを感じたら被害が大きくなる前に、頼れる人や相談役などへ相談することをおすすめします。

会社内や学校内で解決できない場合は、労働基準監督署などの専門家へ相談することで解決できる場合もありますので、一人で悩まず、まずは相談しましょう。

いじめの訴訟をするにあたって、損害賠償請求の成功の鍵を握るのは、嫌がらせ行為の日時の記録などの確かな証拠です。

そのため、専門知識を持った第三者に調査を依頼し、証拠を集めることがとても重要になります。

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