そもそも騒音とは何か
5つに分類される騒音の種類
- 家庭用機器から生じる騒音
洗濯機や掃除機を動かす音、目覚まし時計や電話のベル音など
- 家庭用設備、住宅構造面が原因で生じる騒音
冷暖房機の室外機の音、トイレや風呂などの給排水の音、ドアやシャッターを開け閉めする音など
- 音響機器から生じる音
テレビやオーディオの音、ピアノやギターなど楽器演奏の音など
- 生活行動に伴う音
話し声や子どもが飛び跳ねる音など
- その他
ペットの鳴き声、自動車・オートバイの空ふかしの音など
このような音は、たとえ注意を払っていたとしても、生活をしている上で出てしまうものです。
また、どの程度の音量から騒音と感じるかは人それぞれ違いますし、同じ音量であっても昼間と深夜・早朝など時間帯によって感じ方も変わってきます。
しかし、これらの音が受忍限度を超えている場合、睡眠に支障をきたしてしまったりして体調を崩したりするケースもあり、近隣トラブルから訴訟に発展することも少なくありません。
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受忍限度について
騒音訴訟について、騒音が「受忍限度」を超えているかが争点となります。
受忍限度とは社会通念上、我慢できる程度のものか否かを示す基準となるものです。
騒音の内容や程度、騒音の発生者が騒音を防止したり軽減させたりする対策を採ったか、などを総合的に考慮して判断されます。
受忍限度の基準値を見てみると、
昼間:50デシベル~60デシベル
(騒音例:静かな乗用車、普通の会話)
夜間:40デシベル~50デシベル
(騒音例:昼間の静かな住宅地、図書館)
となっていますので、思ったよりも小さな音でも受忍限度を超えている可能性が大いにあります。
※受忍限度の基準値は地域によって異なるため、自身が居住する地域の基準値を確認してみて下さい。
訴訟する為に準備するべき3つのこと
その1 騒音の記録(証拠)を取る
測定器を使って音量を数値化しましょう。
安価な製品ならインターネットで数千円程度で購入でき、自治体によっては無料貸出を行っているケースもあります。
ただし、簡易的な機器では正確に測定できないこともあり、操作方法を誤ると正しいデータが得られない可能性があります。
その場合、証拠としての価値が低下してしまうこともあるため注意が必要です。
より確実に証拠を残すには、第三者の専門家による測定を利用するのが望ましい方法です。
T.L探偵事務所では、実際に測定した記録を裁判や調停で有効に使える「調査報告書」としてご提供しています。
その2 管理会社や警察に相談する
騒音を起こしている本人に対し、インターホンを鳴らしに行って注意しに行くなど直接的にコンタクトを取るのは、暴力やその他トラブルを引き起こす可能性があるので絶対に避け、お住いの不動産の管理会社に騒音の事実を伝え、騒音を出している相手に連絡してもらいましょう。
あまりにも迷惑な騒音の場合、110番通報し警察官に注意してもらうと、一時的な効果は期待できると思います。
あとは、苦情を言った日、苦情の回数、苦情を入れた方法、管理会社や警察の対応など、残せる情報は全て記録しておきましょう。
その3 心療内科を受診し診断書をもらう
実際に心療内科に行って騒音によって起こる睡眠障害、ストレス、生理不順などの症状を訴え、生活が困難である旨がわかるようにしっかりと症状を伝えて診断書を発行してもらいましょう。
病院の書式で作成される診断書の費用は、クリニックによって異なりますが一般的には、2,000円~10,000円が相場です。
騒音裁判で不利になりやすいケースとその回避策
証拠の準備を進める際に注意すべきなのは、何が裁判で評価され、何が不利につながるのかを理解しておくことです。
実際の判例でも、証拠の有無やその信頼性が判決に大きく影響しています。
裁判で重視される主な証拠
- 音量データ:昼間50~60dB、夜間40~50dBを常時超える場合は受忍限度を超える可能性が高い
- 継続性の証明:反復して騒音が発生していることを示す記録
- 健康被害の証明:医師の診断書や通院記録による立証
- 対応記録:管理会社・警察・行政への相談履歴
これらが揃っているほど、裁判での立証力が高まります。
個人測定と第三者測定の違い
個人での測定も「一定の信用性」は認められますが、測定方法や時間帯が偏ると参考資料にとどまり、決定的な証拠とはみなされません。
一方、自治体や第三者機関による測定は中立性と正確性が担保されており、裁判での評価が高い傾向にあります。
裁判で不利になる対応例
- 感情的になって証拠収集を怠る
- 相手方に直接苦情を伝え、トラブルを悪化させる
- 記録を残さず口頭でのやり取りに終始する
こうした行動は後の訴訟で不利に働く可能性があります。
訴訟を有利に進めるためには、冷静に、計画的に証拠を積み重ねることが重要です。
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訴訟の準備ができたら
弁護士に相談し訴訟へ
騒音が原因で頭痛や不眠、うつ病などの健康被害が生じた場合は、民法第709条および第710条にもとづいて、騒音の発生源である住人に対して不法行為による損害賠償を請求することができます。
また、騒音トラブルの相談に対し、管理会社や大家が誠実に対応しなかったり、建物の構造上の欠陥が騒音の原因だったりした場合は、民法第415条および第541条、第543条に基づき、債務不履行による損害賠償や契約解除を求めることも可能です。
分譲マンションの構造上の欠陥が原因で騒音が出るのであれば、販売会社に対して瑕疵(かし)担保責任、建設会社に対して製造物責任などの法的責任を問える場合があります。
T.L探偵事務所では、提携している弁護士事務所がありますのでご紹介させていただくことも可能です。
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騒音裁判にかかる費用と救済の可能性
騒音裁判では、十分な証拠を揃えても原告が必ず勝訴できるとは限りません。
公害等調整委員会や裁判所のデータによれば、救済を受けられる割合はおよそ23~36%程度にとどまります。
調停成立や一部認容といった限定的な救済が中心で、完全勝訴は少数派です。
ただし近年は、損害賠償請求や差止めが認められる判例も増えてきており、十分な証拠を整えれば救済の可能性を高められます。
裁判にかかる費用としては、裁判所へ納める印紙代や予納郵券代に加え、弁護士への着手金や成功報酬などが必要です。
事件の規模によって金額は変動しますが、訴訟を進めるには数十万円規模の費用がかかるのが一般的と考えておくとよいでしょう。
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実際にあった騒音訴訟の判例
認められた判例
事件名称
上階子供の騒音に対する損害賠償請求事件
騒音調査の結果
騒音計で騒音値を測定したところ50~65デシベル(C特性の測定値をA特性に補正した値)の騒音がほぼ毎日発生していることが分かった。
判決
・被告は原告に対して36万円支払うこと
・被告は訴訟費用の1/6を負担する事
事件名称
店舗テナント内のライブハウスから発生した騒音が上階のレストランに対する不法行為として認められた事件
騒音調査の結果
騒音計で騒音値を測定したところライブハウス営業時間に60~70ホンを超える騒音が発生していることが分かった。
※ホン:A特性におけるデシベル(dB)と同一視されていた。過去に使われていた騒音レベルの単位。
1000ヘルツの純音のホンは、その音圧レベルを表すデシベルに等しい。
判決
・被告は原告に対して計228万円支払うこと
・被告は訴訟費用の1/2を負担する事
事件名称
製材作業の騒音について隣家の損害賠償請求が認められた事件
騒音調査の結果
騒音計で騒音値を測定したところ68~70ホンの騒音が発生していることが分かった。
※ホン:A特性におけるデシベル(dB)と同一視されていた。過去に使われていた騒音レベルの単位。1000ヘルツの純音のホンは、その音圧レベルを表すデシベルに等しい。
判決
・被告らは原告らに対して計260万円支払うこと
・被告らは訴訟費用の1/3を負担する事
認められなかった判例
事件名称
ミシンによる上階からの騒音に対する差止請求が認められなかった事件
判決
・原告の請求を棄却
・訴訟費用は全て原告の負担
裁判所の判断
・ミシンによる作業の音量が60dBを超えると認めるに足る証拠はない。
・被告のマンション賃貸の状況から騒音の発生源は被告でないといえる。
・借主が被告と同じ機械、器具を使用して同時間帯に作業を行うことも考えがたい。
・借主が被告と同じ勤務先の社員とは考えにくい。
・原告を悩ませる騒音の発生源が被告と認めることはできない。
・被告が原告に対して騒音を侵入させていると認めることはできない。
騒音慰謝料の相場
慰謝料の金額は、騒音の種類や継続期間、被害の深刻さによって大きく変動します。
過去の判例では、マンションなどの生活音に対しては10万~30万円程度が認められるケースが多く、建設工事や解体工事の場合は40万~80万円程度が相場とされてきました。
さらに、工場や製材所のように継続的な高レベル騒音が発生し、健康被害との因果関係が明確に示された事例では、150万~300万円前後と高額な賠償が命じられたケースもあります。
実際に、製材作業による騒音訴訟では260万円の賠償が認定されました。
これは68~70ホンという高い騒音が長期間続き、生活や健康に深刻な影響を与えたと判断されたためです。
慰謝料額を左右する主な要因には以下のものがあります。
- 騒音の大きさ(デシベル・ホン数)
- 発生の継続期間
- 健康被害の有無とその程度
- 加害者の対応姿勢
- 被害者の生活全般への影響
などが挙げられます。
騒音による精神的苦痛への対処
金銭的な賠償だけでなく、騒音は被害者の精神的健康に深刻なダメージを与えることがあります。
代表的な症状として、睡眠障害(入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒)、不安感や過度の緊張、気分の落ち込みや無気力、集中力の低下、さらには頭痛や胃腸不良といった身体症状まで引き起こされることがあります。
こうした精神的被害を裁判で認めてもらうためには、専門医による診断書や通院記録、薬物治療の履歴などを収集し、騒音と症状の関連性を医学的に示すことが不可欠です。
騒音発生時刻と体調不良の記録を日常的につけておくことで、因果関係をより明確に証明できます。
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まとめ
騒音による睡眠障害や精神的苦痛は、決して我慢すべき問題ではありません。
適切な証拠収集と法的手続きを行うことで、多くのケースで救済を受けることができます。
重要なのは感情的にならず冷静に対処することです。
訴訟を成功させるためには、客観的で継続的な騒音測定記録、管理会社や警察への相談履歴、医師による診断書と健康被害の記録の3つの準備が欠かせません。
騒音問題は時間が経過するほど解決が困難になることが多いため、早期の対応が重要です。
一人で悩まず、専門家のサポートを受けながら適切な対策を講じることをおすすめします。
T.L探偵事務所では、騒音調査から法的手続きまで、総合的なサポートを提供しています。
まずはお気軽にご相談ください。
あなたの平穏な生活を取り戻すお手伝いをさせていただきます。